小児期発症全身性エリテマトーデス
病名
小児期発症全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus in children: SLE)
小児SLEはどのような病気か?
全身性エリテマトーデス(SLE)は、全身症状として発熱、だるさ、疲れやすさなど、皮膚では顔面に特有の発疹(蝶形紅斑)や体幹や四肢に赤い発疹が現れ、胸の痛みや息切れ、ループス腎炎と呼ばれる腎疾患、また、頭痛、けいれん、幻視などの中枢神経症状(中枢神経ループス)などの症状が現れます。
血液検査では炎症を表す赤沈値は早くなるのですが、一般的に炎症を思わせるCRPは陰性です。
一方、特有の検査所見として抗核抗体(均質型)が陽性になり、さらに細かく調べると抗dsDNA抗体が陽性となり診断が確定します。
小児では少ないですが、成人と同じように抗Sm抗体が陽性になる例もあります。
このように病状の直接の原因は、身体を守るはずの免疫機構が自分の身体を攻撃することで生じる病気の一つで「自己免疫疾患」と呼ばれます。根本の原因は不明ですが自己抗体が作られて血管や周囲組織に生じる「炎症」により病状が現れ、全身の臓器、とくに血管が細かく密である皮膚、腎臓、呼吸器、中枢神経系などに慢性的な炎症が生じます。
SLEの他にもいくつかの自己免疫疾患がありますが、SLEではそのうち抗リン脂質抗体症候群やシェーグレン症候群を併発することがあります。これも血液検査で予め知っておく必要があります。
SLEではさまざまな臓器に病変が及ぶことからSLEと併発症の診断とともに腎、心・肺、中枢神経系などの障害の有無・程度、眼科的な検査などを加え全身を検索します。とくに腎は腎生検により障害の種類を確定することが治療法の選択にも重要になります。
最近の小児SLEの治療法は?
小児SLEの治療は、かつてはプレドニゾロンなど副腎皮質ホルモンの大量療法により炎症を抑える治療が主流でしたが、成長期にある小児には成長障害や肥満症、骨粗鬆症などの副作用が大きな問題でした。
その後、さまざまな治療薬を組み合わせる努力が続けられ、最近では初期治療としてメチルプレドニゾロン・パルス療法により炎症を抑え込み、副作用の少ない免疫抑制剤に少量プレドニゾロンを組み合わせた内服療法により炎症抑制の維持を図ることが一般的になりました。また、分子標的療法薬も開発され治療に用いられるようになりました。